顕彰事業

第7回表彰 授賞式の模様:文化庁 近藤誠一長官の受賞挨拶

 皆様、こんにちは。文化庁長官近藤でございます。

 本日は第7回の渡辺晋賞の授賞式にお招きを頂きまして大変光栄に思います。まずは、3.11後最初の授賞式が無事に開催されます事を、心からお喜びを申し上げます。また今回受賞された大里洋吉様に心からお祝いを申し上げます。

 私も文化庁長官になってから1年半様々な文化芸術、伝統芸能等を見て勉強してまいりましたが、これ程幅広く、奥深い世界があったのかと思う毎日でございます。1000年以上の歴史を誇る雅楽をはじめとして、伝統芸能、そして、150年前から入ってきた西洋の様々な文化芸術をうまく吸収し、自分のものにし、そして今や伝統芸能から、いわゆるJポップといわれてアジアを席巻した現代アートに至るまで、非常に幅広い文化芸術を持っております。日本伝統のものから、西洋のもの、アジアのもの全てをこなして、これ程選択肢の広い国はないと思います。

 国民の方々にはクラシックファンもいれば、ポップスのファンもいる、ジャズファンもいます。大事な事は何か特定のものに価値を付けるのではなく、あらゆる選択肢を用意し、国民の方々が自分の一番好きな、自分が生きがいを感じるものを提供することだろうと思います。そういう意味で、わが国は、世界に誇るべき選択肢を持っています。

 しかしながら、この20年程、特に日本は政治も経済も社会も、その運営が思うようにいっていないように思います。日本人の持っている本来の力が十分に発揮されぬままに何となく20年が過ぎてしまいました。そんな中で、一人気を吐いているのが、文化芸術です。戦後の政策が、経済成長に非常に偏っていた、それはそれで成功いたしましたが、それを切り替えなければいけない時期が来たにも関わらず、必ずしも日本全体が、その発想の転換が出来ていない。そういう中で文化芸術を通して、人間の持つ精神性の重要さ、人への思いやり、人との絆、そして心を豊かにして、物質的にはともあれ、元気を出し、明日への勇気・希望を生みだす、そういうことの重要性がもっと人々の生活の中に、職場に、学校に根付くような政策を、政府はそして、財界も、学校も取るべきではなかったのか。

 しかし、決して遅くはありません。今からでも十分それが出来ると示してくれたのが恐らく3.11だったと思います。日本人の多くがあそこで立ち止まって考え、自分たちとは一体何なのか?日本とは何なのか?日本人のよって立つところは何なのか?を考えました。これをきっかけに是非、文化芸術の力というものをフルに発揮出来るような世界にしていくべきだと思います。

 日本には沢山の芸術的才能を持った方がいらっしゃいます。そしてまた、文化芸術を望む、一種の需要も国民の間にございます。しかしながら、戦後政府がやや怠った事もあって、それを繋ぐところ、つまり、才能を消費者に結びつけるマネージメントが十分ではありませんでした。しかしながら民間において、渡邊晋さんのように、素晴らしい芸能の花が咲くような土壌と毎日のケアをして頂く方がいらっしゃったお陰で、日本には素晴らしい文化が根付いています。政府がこれからもう少しそういうところにも力を入れるべきだと思いますが、引き続きプロデューサー、そして、新しい俳優さん・歌手を発見し育て上げる、そういった努力を続けて頂ければと思います。これからの日本の元気の為に、そして、世界に日本人の魂を送る、伝える為にも、文化芸術のマネージメント、プロデューシングといったことを是非これからも強く進めて行きたいと思います。

 文化庁としましても、出来る限りの側面のご支援をしたいと思います。政府は文化芸術活動を高める環境を整える事が大事でございまして、中身にはタッチするべきではありません。出来る限り側面支援をしながら、日本人の持っている才能がフルに発揮され、日本人がみんな幸せになり、そして、世界に日本を発信出来る、そういうような社会にしていくべく、私も及ばずながら努力を続けていく所存でございます。渡邊美佐さんにおかれましても引き続きこの面でのご尽力をお願いし、そして、結びにここにいらっしゃる皆様方のご健康とご繁栄、今後の文化芸術へのご貢献を祈念致しまして、私のご挨拶とさせて頂きます。ありがとうございました。おめでとうございます。

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