第8回表彰 授賞式の模様:文化庁 近藤誠一長官の受賞挨拶
皆様、こんにちは。文化庁長官の近藤誠一でございます。
本日は、第8回・渡辺晋賞の授賞式が、かくも盛大に、華やかに、素晴らしい青空の下で開催されましたことを、心からお喜び申し上げます。そしてこの栄えある賞を今回、受賞されました三谷幸喜さん、本当におめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。また、三谷さんを支えてこられた、ご家族やスタッフの皆様にも、併せて「おめでとう」を申し上げたいと思います。
いま渡邊美佐理事長もいわれましたように、アベノミクスでやや明るい兆しが見えてきましたが、まだまだ日本の経済は、先行きに不透明な部分がございます。そういう中で、沢山の方々が、日本人の持つ実力が十分に反映されていないのではないかという、もどかしさや苛立ちを感じています。振り返ってみますと、70年近く前の戦後の未曾有の大混乱の中で、我々の祖父母や両親が必死に立ち上がり、苦労し、全てを賭けて、国の為、会社の為、家族の為に働いてきました。実は、その支えになってきたものの一つが大衆芸能です。そこに身を投じて、大衆芸能の近代化と合理化を成し遂げることで、一所懸命に働く人たちを励まし、楽しませてこられたのが渡辺晋さんだと思います。先程も会場に流れていた、懐かしいさまざまな歌声や音楽を聴いて、戦後の日本の事を少し思い出させていただきました。
その後、日本はミラクルといわれるように、見事に世界第2位の経済大国になりました。ところが、20年ほど前にバブルが弾けて以来、なかなか思うように国が動きません。閉塞感が広がり、今は「いじめ」や「体罰」などの暗いニュースも増えてまいりました。しかし今の政権の下で見えてきた明るい兆しを拡大させ、そこに理想を伴わせながら継続・発展させていくことで、第2のミラクルが実現されることを心から期待しております。この苦しかった20年間を支えてこられたのが、渡辺晋さんの志を継承するプロデューサーたちの努力だったと思います。日本の5年後、10年後の社会が第2のミラクルと言われるようになることを期待しておりますが、言うまでもなく、その実現のためにポップス音楽や大衆芸能の果たす役割は大変大きいのではないでしょうか。
さて、三谷幸喜さんは、舞台・映画・ドラマといった様々な分野で活躍され、さらに、歌舞伎や文楽といった伝統芸能からも様々なインスピレーションを得て、多彩なプロデューサーぶりを発揮されて来られました。苦しいデフレの20年間の国民の精神面を支え、実に有意義な実績をあげられた一人であると思います。そういった意味では、本日の受賞は当然ともいえるでしょう。
いま私は、日本の大衆芸能からクラシックに至るまでのすべての文化的な業界が、その力をフルに発揮して、国民一人ひとりをもっと元気づけ、社会全体を活性化させることで、再び世界に輝く日本となる日が、そう遠くないという予感がしております。文化芸術を通じてこの国を改めて自信と誇りと栄光に溢れた国にしたいと思います。文化庁は、皆様のお力も借りながら最大の努力をしますし、私も微力を尽くしたいと思います。是非、三谷幸喜さん、渡邊美佐さん、そしてここに居られる皆様方と手を取り合って、この国の元気の復活に向けて、一緒に努力をしていければと思います。
簡単ではございますが、第8回渡辺晋賞授賞式にあたりまして、一言お祝いを申し上げさせていただきました。ありがとうございました。